はじめに
ここでは、さまざまな問題解決手法を概観しています。お客様の問題を解決することが、コンサルタントの役割と考えるからです。
多くの場合、お客様はお客様なりの問題解決手法をもっています。興味深いことは、お客様が信じている問題解決手法が微妙に異なっている点です。さらに、さまざまな問題解決手法は表現の仕方や、力点の置き方こそ違え、基本的な考え方は共通している点です。
問題を解決できるかどうかでの議論に時間をかけることには価値がありますが、手法の違いを議論することに時間をかけてしまうことは愚かなことです。コンサルタントは、お客様が信じているさまざまな問題解決手法を理解し、お客様の状況に合わせて適切に手法を修正できなくてはなりません。
例えば、現状改善型の手法に固執するお客さんが、実際には大胆な改革をしなくてはならないとわかったときは、お客様の手法を尊重しつつ、大胆な改革を発想できる手法に修正していきます。
以下、始めに「問題」自体を考え直してみて、続いてさまざまな問題解決の手法を見ていきます。
1)問題
* 問題とはなにか?
* どんな問題にも有効な問題解決手法があるのか?
* 目的、現状、問題、原因、問題点、課題、解決策とは何か?
2)思考とは何か?
問題解決に有効な思考パターンは以下の3つに集約できる
・判断の基準に重きを置いた思考パターン
* 戦略的思考
* 人情的思考
* 実践的思考
* 経験的思考
・判断を下すまでの過程に重きを置いた思考パターン
* 合理的思考
* システムズ思考
* 因果関係思考
* 環境適応思考(ex.ゲーム理論)
『「なぜだ」を5回繰り返せ』思考
・判断を下すまでの過程を効率化することに重きを置いた思考パターン
* 仮説思考
* 発想思考
* 階層構造思考(ツリー構造思考)
* 収束思考と発散思考
時間軸思考
1)問題
■ 問題とはなにか?
よくない状態、悪い状態、もっとよくできると思う状態、不明なところを明らかにできる状態、などはすべて広い意味で問題がある状態と考えられます。問題を、性質で分類すると、数学の問題のように、問題があっても特に誰にも迷惑をかけないものと、生産ラインでの不良発生の問題のようにほっておくと大きな損失を生じてしまうものがあります。また、問題を時間軸で分類すると、今、現在、問題がある場合と、将来において問題が起こりそうな場合の2つがあります。
*Point 問題:悪い状態、よりよくできる状態
■ どんな問題にも有効な問題解決手法があるのか?
抽象的な問題解決の枠組みは、ほぼどんな問題にも当てはめることができます。合理的思考法を問題解決の枠組みとして用いることが多いようです。合理的思考法が問題を解決していく過程を時間軸にそって体系化したものだからだと考えられます。
1. 問題がなくなった状態(あるべき姿)を設定する
2. 問題がない状態と比べて、実際の状態はどうなっているのかを明確にする
3. 問題が起こる原因を追究する
4. 原因を解決する手段を発想する
5. 解決策を絞り込む
6. 解決策を実行する
といった枠組みで問題を解決していきます。
しかし、数学の問題を解く際には、あるべき姿や問題が起こる原因などはあまり追求しません。自分の知っている解法で問題を解くことに集中します。企業経営の問題解決に当たって、現状を改善していこうとするときは問題の原因の追究に時間を割き、新しい企業戦略を打ち立てようとするときはあるべき姿の検討に時間を割きます。問題解決手法は問題の性質によって、問題解決の枠組みのなかでどこに力点を置くかが変わってきます。
*Point 合理的思考法が問題解決の一般的枠組みとされることが多い
■ 問題解決に有効な思考パターン
目的、現状、問題、原因、問題点、課題、解決策戻る
問題解決は必ずまわりの人との連携が必要になります。周りの人と連携する際に、それぞれの人が問題解決手法に使う用語を別々の意味でとらえていると話が微妙にすれ違ってうまく議論が進みません。以下に問題解決において頻繁に使われる用語を確認いたしします。
* 目的:「やりたいこと」・・・あるべき姿
実現したい理想の状態、またはそうした状態を実現すること、つまりやりたいことを目的といいます。実現したい状態を明確に意図する場合は「あるべき姿」と言う。制約条件を加味してめざしていく状態を「めざすべき姿」として、「あるべき姿」と区別する場合もあります。
* 現状:「今の事実」・・・現状分析(SWOT分析)
現在の状態。因果関係として捉えず起こっている事実を情報やものの流れとしてとらえる方が、推測を排した適切な事実把握を行いやすいです(因果関係でとらえようとするといくつもの因果が複雑に絡み合ってしまい事実の把握が難しくなってしまう)。また、現状は、事実ではありますが、すべてが問題ではありません。
* 問題:「(ある人から見たときの)良くない状態」・・・課題の抽出
うまくいっていない状態やさらによくできる状態。理想とする状態が違えば同じ現状をみても人によって問題の捉え方は変わってきます。問題の把握には「誰から」見たときに問題となるのかという「視点」の確認が不可欠です。
* 原因:「問題を引き起こしている要因」・・・データ収集、課題の分析
問題を起こしている要因。解決可能なものと解決不可能なものの両方を含みます。
* 問題点:「原因のうち解決可能なもの」
* 課題:「問題点を取り除くことを宣言したもの。問題点の裏返し」
* 解決策:「課題を解決するために行う具体的な施策」
*Point しっかりした概念の定義は問題解決の生産性向上につながる!
2)思考とは何か
抽象的に言えば思考というのは「考えること」になります。しかし、ただ考えているだけでは価値を生み出す思考にはなりません。価値を生み出すように考えるということは、考えている対象に対して判断をくだして、それが正しいということです。ものごとについて判断を下していくことが価値を生み出す思考の第一歩です。加えて、その判断が正しければ、思考によって価値が生み出されます。
価値ある思考の三要素
* 対象を考えること
* 基準を元に判断すること
* 判断が正しいこと
判断をするためには、判断の「基準」が必要になります。「基準」がなくては判断を下すことはできません。自分が考えている対象が「基準」に対してどうなのかを見極めることで判断ができます。
しかし、判断の際に用いる「基準」は人によって違います。長期的に考えている人と短期的に考えている人では「基準」が違うので、全く別の判断がなされてしまいます。
また、正しい判断を行うまでの思考の過程も人によって違ってきます。
さらに、正しい判断を効率的に行う方法も数々研究されています。
以下、思考法を次の3つの範疇に分類して説明いたします。
* 判断を下す基準に重きを置いた思考パターン
* 判断を下すまでの過程に重きを置いた思考パターン
* 判断を下すまでの過程を効率化することに重きを置いた思考パターン
上記の3つの範疇について、本項で簡単な説明をした後、それぞれの思考パターンについて次項で説明いたします。
戦略的思考を例に、考えている対象を正しいか、正しくないか判断する「基準」に重きを置いた思考法を説明します。「事業が苦しくなった」という問題を考えるとき、戦略的に思考すれば、「絞り込むこと」が判断の基準になり、「経営資源を分散させてしまっている」という事実があれば、「絞り込むこと」という基準に反しているので「経営資源を分散させてしまったこと」は正しくないことと判断されます。この過程は、戦略的なものの見方からすると正しい判断をしており、なにがしかの価値が生み出されたことになります。
次に、正しい判断をする過程に重きを置いた思考法について、階層構造思考を例に説明します。「事業が苦しくなった」という問題は抽象的で、どういうことが実際に起こったのかわかりません。売り上げが落ち込んだのか、売り上げは順調なんだけれども大きな投資をして利息の支払いが大変になったのか、主要な原材料が値上がりして製造コストが高騰したのか、いろいろな状況が考えられます。さらに、売り上げが落ち込んだという点についても、どうして落ち込んだのか細かく調べてみたくなります。このときは、事業が苦しくなったという問題を少しずつ具体化する思考をしているわけです。抽象的なことから具体的なことに向かって階層を作っているともいえます。具体的になればなるほどすそ野が広がるのでピラミッドのようだともいえます。この抽象的な段階から具体的な段階へ考えを進めていく思考のパターンを階層構造思考などと呼びます。
また、今の事業が苦しくなったという問題から具体的な状況へ進んでいく課程を「原因を追究している」ととらえるかたもいるでしょう。具体的にするという方向性よりも因果関係を明らかにすることに重きを置いているならば因果関係思考ととらえてもよいでしょう。
さらに、進んで考えると、まず事実関係の階層構造を作って、それをふまえた上で原因を追究した方が抜け漏れがなく合理的だと考える方もいるでしょう。確かにこうした考え方の方が合理的です。原因を追究する前に事実を明らかにするという思考は合理的思考法に含まれています。
ものを考えるときは、階層を作って整理すればよいのだという方もいれば、因果関係を整理すればいいのだという人もいるでしょう。さらに、合理的な思考体系にもとづいて検討しなくては行けないという人もいるでしょう。
もう一つ、判断を行うまでの過程を効率化する方法論も広く思考法として捕らえられえています。これらには仮説思考、発想思考(KJ法など)、収束思考と発散思考、時間軸思考などがあります。
■ 判断を下す基準に重きを置いた思考パターン
・戦略的思考
戦略的とは、集中させる、偏らせる、重点化する、要を押さえる、優先順位をつける、といった意味あいです。戦略と呼ばれていても総花的なアイデアの羅列でしかない戦略もたくさんあります。情報を集め整理するだけでなく、集めて整理した情報をもとに何をするか(より示唆的に言えば、何をしないか)を決める思考をしなくては有効性の高い問題解決にはなりません。
古くから孫子の兵法、ナポレオンの一点突破戦法など、戦略的思考の有効性を示す例は多くあります。新しいところでは、企業戦略の立案に関してマイケル・ポーターも低コスト、差別化と並んでフォーカスを競争優位の根源の1つに挙げています。
*Point 戦略とは敵の弱点に戦力を集中することなり!
・人情的思考
問題解決を考えるとき感情への配慮が重要になります。問題を解決するには相当なエネルギーが必要となり、関与者が積極的に取り組め、かつ、まわりの人たちが好意的に協力してくれる状況を作る必要があります。人情への配慮ががしで問題は解決できません。
*Point 人情なくして問題解決なし!
・実践的思考
* できることからすぐやる
* 大きな原因から順番に解決に取り組む(戦略的思考ともいえる)
完成された計画よりも、不完全な計画でも早く実行した方が好ましい結果がでやすいです。また、パレートの法則などでいわれていますように、問題の80%は様々な原因の中の主だった20%によって引き起こされていることが多いです。
戦略的思考、人情的思考とも、科学的に証明された根拠があるわけではないので、実践的思考に含まれるともいえます。
*Point 8割の問題は2割の原因から引き起こされる
・経験的思考
自分が経験してきたことを基本の判断をしていく思考です。新しいことをする際も自分の経験を中心にして、そこから少しずつまわりへ広がっていくようなアプローチをします。
短期的にはもっとも堅実な思考法ですが、長期的には、経験の枠組みから抜け出せなくなってしまい、新しい枠組みでないと解決できない問題に出会ったときに手も足も出なくなってしまうという弱みも持っています。
野中郁次郎氏らが編纂した「失敗の本質」日本軍部第二次大戦での敗因を例に詳しく、経験的思考の弱みが述べられています。
技術や人々の生活が大きく変わるときには確かに、経験的思考がうまく働かないこともありますが、実際のビジネス活動においては、自分の経験に基づいて判断をしていくことがもっとも確かな思考法と考えられます。
*Point 経験に勝る財産なし、しかれども財産また人を滅ぼす
■ 判断を下すまでの過程に重きを置いた思考パターン
・合理的思考
想像力や運など必ずしも合理的な思考が通用しない要素をのぞいた場合の最善の問題解決の思考法を合理的思考法といいます。(もちろん、理屈(=合理性)だけで問題を解決しきることはできません。想像力や運など合理性を越えた要素も問題解決の重要な要素です)。問題の解決をできる限り合理的にしようとすると、問題解決は以下のようなステップで進められます。
1. 問題がなくなった状態(あるべき姿)を設定する
ここでは、現状や制約条件を全く無視して、最前の状態を発想する。(往々にして現状に囚われてしまい、制約条件の許す範囲で問題がない状態を考えてしまいがちです。現状や成約条件に囚われてしまうと、問題解決の可能性をせばめてしまいます。)
2. 問題がない状態と比べて、実際の状態はどうなっているのかを明確にする
ここでは極力推測を排除することが重要です。ここで間違った推測をいれてしまうと以降のステップは意味をなさなくなってしまいます。
また、ここでは、実際の状態に現在、問題がある状態と、将来、問題が生じることが予想される状態の2つがあることを意識すると混乱を避けることができます。両方を一度に考えるよりも、分けて考えた方が整理しやすくなります。
3. 問題が起こる原因を追究する
ここでは、考える内容のレベルを意識する必要があります。問題よりも大きな原因を考えてもほとんどの場合意味をなしません。たとえば、「企業の国際化が進んでいない」という問題をかんがえている際に、「国の英語教育が不十分であるという」原因はあまり意味をなしません。考えていることのレベルを意識することは、細かい原因にとらわれすぎて、重要な原因を見落としてしまうことをさけるのにも役立ちます。原因の追究は、細かい(=具体的な)原因を大まかな原因にグルーピングして階層を作りながら進めると、混乱せず、抜け漏れなく行うことができます。
参考:階層化してものごとを考えることをピラミッド・プリンシプル(ピラミッドの原理)と言うことがあります。階層化してものごとを把握する思考は問題解決にとって非常に有効です。
参考:混乱せず、抜け漏れなく物事を考えることをMutually independent, collectively exhausted, functionally equalの頭文字をとってMICEFE、(または、Functionally equalを抜かしてMICE)というキーワードで説明されることがあります
o Mutually independent:互いに独立していて、重なり合わない
o Collectively exhausted:全部集めるとすべてになる
o Functionally equal:互いに同じ役割を果たす
4. 原因を解決する手段を発想する
ここでは、解決手段は1つではないということに注意します。たくさん、解決策を発想しておいて、アイデアが出尽くしてから、それらを比べて善し悪しを吟味します。
5. 解決策を絞り込む
ここでは、全体の構造の中で要となるような、1つ動かせばほかの部分も自然に動いてしまうような急所を選択するのがよいです。
6. 解決策を実行する
ここでは以下の点が重要です。
* 最善策を周到に準備するよりもすぐに実現できることから始める方がよい。
* 選択した解決策がうまくいかないケースを事前に想定し対策を立てておく。
* 解決策はうまくいったにせようまくいかなかったにせよ評価を行い次回につなげる。
*Point 合理的思考法にこだわりすぎると「策士、策におぼれる」になります!
・システムズ思考
問題は、システムの中で起こり、システムを分析することで問題を解決できるとする考え方です。”システム”を因果関係とおき変えてもほぼ同じ意味あいになります。因果関係ととらえると1つの原因から1つの結果が生じるととらえがちになりますので、システムととらえて、全体の中で様々な原因が様々な結果を生じさせているととらえた方がよいでしょう。
代表的なシステムズ思考による問題解決手法は以下のようなものです。
システムの構成要素
* 目 的
* インプット
* ファンクション
* アウトプット
* 内乱要因(原因のうち自分の力で取り除くことができるもの)
* 外乱要因(原因のうち自分の力では取り除けないもの)
システムの動作原理
まず、ある目的が設定されシステムが起動します。なにも問題が生じなければ、インプットはファンクションを経てはじめに設定した目的のとうりのアウトプットを生み出します。現実の世界では目的どおりのアウトプットが得られることは希です。何らかの原因のためにアウトプットは目的どおりにならないことが多いです。このなんらかの原因というのが内乱要因または外乱要因に大別されます。自分の力で取り除くことが可能なのに引き起こしてしまった原因を内乱要因と呼び、自分の力ではどうにもできない原因を外乱要因といいます。
たとえば、ゴルフをするという目的があるとき、雷が鳴ったためにゴルフができなかったのなら雷は外乱要因です。ゴルフ場にゴルフバックを持っていくのを忘れたためにゴルフができなかったのなら、ゴルフバックを忘れたことは内乱要因です。
ひとたびシステムが起動して何らかのアウトプットがでれば、そのアウトプットと目的の差を解消することが次の目的となりシステムは作動し続けます(アウトプットが目的と同じあった場合は、それを維持することか、あるいわ、新たに変更された目的が次の目的になります)
外乱要因は一般に制約条件と言われるものに近い性質のものです。解決可能な原因と解決不可能な原因の切り分けは問題解決において有効性が高いものです。
*Point 問題には解決できる原因と解決できない原因がある
・因果関係思考
物事の因果関係をつなげて考える思考法は問題解決において多用されます。因果関係を考えるときは同じレベルの具体性で関係をつないでいく必要があります。さらに、情報量を増やしすぎて混乱してしまわないために、全体の因果関係を考えるときはある程度抽象的な表現で考えることが必要になります。逆に、具体的な表現で関係をつないでいくときは検討する範囲を絞る必要があります。
*Point すべての現象は原因と結果のつながりである(かのように見える)
・環境適応思考(ex.ゲーム理論)
対戦相手があり、相手の出方によって自分の対応を変えていくのが環境適応思考です。相手の出方の選択肢数に自分の対応の選択肢数を掛け合わせた数だけ考慮すべき選択肢が想定され、その中で自分にとってもっとも有利な選択肢を選んでいきます。
*Point 環境への適応が生命活動の本質かもしれません
・『「なぜだ」を5回繰り返せ』方式
素直に、「現状の自分にとって困っていること」から出発して、「なぜだろう」と原因を考え、思いついた原因についてさらに「なぜだろう」と原因追究を繰り返す思考パターンです。
因果関係思考をより実践的にアレンジした思考パターンと考えてよいでしょう。現状改善においては、これまで述べてきたパターンよりも有効に機能する事が多い思考パターンです。
従来からブレイクスルー型の思考パターン(ジェラルド・ナドラーなど)の対立概念とされてきましたが、原因追究型の思考でもブレイクスルーは可能です。「なぜだ?」考えたときに、原因を要素分解していけば現状改善型になり、反対に原因を構造や目的の側に求めるとブレイクスルー型になります。
*Point なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?
■ 判断を下すまでの過程を効率化することに重きを置いた思考パターン
・仮説思考
いま現在持っている情報から仮説を立て、仮説を実証するのに必要な情報だけを集めるという思考です。もし、仮説が証明できなかった場合は、再び仮説を立てて、同じようにその仮説を実証するための情報を集めます。闇雲に情報を集めるよりも格段に効率よく情報収集を行うことができ、最終的な結論にいたるまでの全行程で見ても、効率のよい思考を行うことができます。
仮説を立てるに当たっては、集めた情報を自分の価値観をもとに組み立て直しているので、単なる情報の整理でなく、独自の発想を組み込むことができます。
*Point 情報はたくさん集めたからといって必ずしも有効には働かない
・発想思考
新しいことを思いつくことが発想することです。しかし、全く何もないところから突然何かを思いつくということは希です。突然思いつく際も、過去に記憶された何かが刺激になって思いついているわけです。効率よく発想を行うための方法論(方法論というよりいくつかのコツといった方が正確にニュアンスを伝えます)を以下に紹介いたします。発想すること自体が、必ずしも、合理的でなく、システマティックでなく、戦略的でないものなので以下の方法論も、完成された思考の体系ではありません。
* 視覚にうったえると効果的である
* 思いついたことを書き出すと効果的である
* 適当なサイズのカードに書き出してみると効果的である
* 今あるものをつなげあわせたり、変形したりして、見方を変えてみると効果的である
思いつくとは、最終的に、誰でもわかるように言葉で説明できる状態にすることです。言葉にできなくても、何かを思いついたという状態にはなります。しかし、言葉にできなくてはほとんどの場合、価値を生み出しません。絵を描いてみたり、カードを書き出したり、それらをつなげたりはなしたりしている間に、言葉にはならない何かを思いつきそれを言葉にしていく過程が発想の過程です。
川喜多次郎さん(KJ法)や中山正和さん(NM法)、アレックス・オズボーンさんなんかんが有名ですね!
*Point ビジュアルに!書く!カード!つなげ合わせ!
・階層構造思考(ツリー構造思考、ピラミッド構造思考)
目的、問題、解決策等はすべて、抽象的な表現から具体的な表現まで階層構造で整理することができ、階層構造を意識することで効率的な思考作業を行うことができます。
階層構造の頂点からすそ野まで、樹木が枝分かれしているイメージになるのでツリー構造とも言われます。同じくすそ野から頂点に向かって三角形を描きますのでピラミッド構造ともいわれます。
具体的な表現をいくつかグルーピングすると一つ抽象度があがったレベルの表現になり、さらにまたそれらをグルーピングしていくとまた一段抽象度のあがった表現になります。具体的なレベルから抽象的なレベルまで少しずつ構成要素が少なくなりながら階層ができあがります。
問題解決を行う際は、同じ内容を人によって違う表現で示すことが多く、表現の違いにとらわれず、全体の構造の中で同じ範疇のことをいっているのか、同じことを具体的にいっているのか、抽象的にいっているのか等に気をつけながら整理すると混乱を防げます。
*Point ピラミッド構造にすると全体がよくわかるようになる
・収束思考と発散思考
アイデアを発想する際には発散思考を使い、発想したたくさんのアイデアを整理するときには収束思考を使います。発散思考は芸術的な頭の働きであり、論理性や合理性はかえって外になることもあります。収束思考は論理性と合理性で突き詰めて思考を行います。2つの思考パターンを使い分けることで思考作業を効率化できます。収束思考と発散思考は共に重要ですが、時間配分を平等にする必要はありません。一般に発散思考は一瞬の出来事であって、とくに時間を割く必要のないものです。収束思考を行っているうちにふとおとずれる発散思考を有効に機能させられる思考の習慣を身につけることが必要です。
*Point 発想はだらだらやっていても仕方がない
・時間軸思考
複雑に絡み合った状況を整理する有効な思考法として時間軸思考があります。複雑な状況を整理する方法論として、時間の流れの順番に整理するというやり方は有効性が高いものです。時間軸にそって整理しても、問題が解決される分けではありませんが、整然と状況を整理することで、問題解決の糸口を見つけやすくなります。
*Point わからなくなったら時間軸に沿って考えてみる
【コンサルタントになる方法】
どうすればコンサルタントになれるのでしょうか?育成されなくても、自分でなれるものなのでしょうか?自分で勝手にコンサルタントを自認するのは簡単です。しかし、コンサルタントにふさわしい成果を出せる人材になるにはどうすれば良いのでしょうか?
ここでは、1つのサンプルとして、私が、"実質的"なコンサルティング能力育成のために用いている段階的アプローチを紹介させていただきます。
コンサルタント育成ステップ
o 事務作業を覚える
o 議事録をとる
o 整理/分析する
o コンテンツ/ノウハウを蓄積する
リーダーシップを身につける
■ 事務作業を覚える
専門知識もいらず、修得にも時間のかからない一つ一つの事務作業もやり方によって効率が大変違ってきます。また、表面的な作業効率だけでなく、相手に合わせて、気遣いを行えることで組織としての作業効率はさらに向上します。これはコンサルタントになるためだけでなく、ビジネスマンすべてに必要な一番基礎的なスキルともいえます。特段に準備の時間をとらなくても反射的に効率的な仕事を組み立てられるようになることがコンサルタントになるための第一歩と考えます。
コピーひとつでも、ホッチキスでとめるのかとめないのか、ファイリング用の穴を空けるのか空けないのか、いちいち指示されなくても状況を自分で読んで仕事をする習慣を身につけることが必要です。
実際、若い人と接してみると、半分以上の人は言われたことしかやりません。言われたことしかやらないタイプはコンサルタントには向かないと判断しています。
■ 議事録をとる
コミュニケーション能力の高さは、コンサルタントにとって必須です。お客さんの話していることを正確に理解し、分析の結果を正しくお客さんに理解させることができなくてはコンサルタントにはなれません。これも、コンサルタントに限らず、優秀なビジネスマンになるために欠かせない素養とオバーラップします。
私は、議事録をとる作業を通じて、コンサルタントとして必要な最低限のコミュニケーション能力は身につけてもらうようにしています。議事録をまともに取れないうちは、次のステップには進ませません。
難しいのは、ある程度、社会人としてキャリアをもっている方が、コンサルタントになりたい場合です。ある程度の社会人経験がある場合、自分の能力に自負があり、いまさら、議事録をとる訓練などやる必要はないという思いに駆られるようです。実際に高いコミュニケーション能力を持っている方の場合は問題ないのですが、コミュニケーション能力が開発されておれず、かつ、基礎訓練をいやがる方がかなりいらっしゃいます。こういうタイプの方の場合、自己分析能力も低いわけですから、コンサルタントには向かないと判断します。
実際の訓練は、以下のように行います。
議事録には2種類あるとします。
1)生議事録
2)サマリー議事録
生議事録というのは、議論の進行をそのまま紙に書き下ろしたものです。議論は、基本的に、書取りよりテンポが速いので、猛烈なスピードで書き取っていくことが要求されます。コンサルタントとしての議事録トレーニングは速記とは違います。速記では記号化することで、書き取る効率を向上させています。しかし、記号は、本人以外には理解できないので、情報共有の観点からみた有効性は低くなります。書き取った議事録は、美しい字体で書かれている必要はありませんが、第三者でも読めるように書かれていなくてはなりません。
さらに、話し言葉では、たくさんの内容が省略されています。また。「こういうやつは」とか「そういうふうにすれば」など、前段の会話をうけて、代名詞を多用して会話がつながっていきます。しかし、代名詞を多用してしまうと、あとから読み返した際に、内容が不鮮明になりがちです。後から読み返しても、また会議に出ていなかった人が読んでも理解できるように、会話を聞き取りながら、代名詞表現は基の文脈に置き換えて書き取っていきます。
およそ、1日(実質6時間程度)の議論は、A4サイズの裏紙に30枚程度の生議事録として書き残すことができます。
生議事録をとる訓練をしばらく続けることで、理解力が飛躍的に向上します。理解力こそがコミュニケーション能力の基本ですので、生議事録書取り訓練は、コミュニケーション能力開発に大変有効であると考えています。
生議事録を取る訓練と平行して、サマリー議事録を作成する訓練を行います。これは、表現力の訓練です。
書き取った生議事録を1ページにまとめる作業をサマリー議事録の作成と考えています。30ページに及ぶ議事録を読み返したいと思う人は、いません。生議事録を読み返すのは、細かい点を確認するために、どうしても読み返さなくてはならない時だけです。それ以外では、せいぜい1ページのサマリー版を読み返すのが限界です。
30ページに及ぶ議事録を1ページにまとめる際には、議論の本質を理解し、その本質を正確に伝えることを目指します。議論した項目をカテゴリー分けして、カテゴリーだけを列挙しても、意味あるサマリーではありません。カテゴリー分けをして理解を助けるとともに、できる限り、議論の経過や背景がわかるように具体的にまとめます。情報を取捨選択するとともに、具体的でかつ凝縮された表現をしなくては1ページに議論の内容をまとめることはできません。生議事録からサマリー議事録をまとめる訓練によって、表現力の基本を習得することができると考えています。
■ 整理/分析する
事務作業を通じてコンサルタントとしての感性を磨き、議事録取りでコミュニケーション能力を開発してはじめて、コンサルタントらしい仕事にたどり着きます。議事を単純にまとめる訓練に続いて、何かをプラスできる整理/分析の手法を身につける訓練を行います。基本になるのは、階層構造の感覚を身につけることです。階層構造の感覚を身につけるとは、同じ事象でも抽象的な捉え方もできれば、具体的な捉え方もでき、さらに、その間には無数の階層があるという感覚を体得するということです。コミュニケーションを普通にしていてもお客さんのいっていることを頭の中で、階層構造で整理できるようになれば、価値を生み出す思考ができるようになったと考えて良いでしょう。
抽象的過ぎる議論をしている際は、具体的な表現へ議論を誘導し、具体的過ぎる議論をしている際は、抽象的にまとめる方向へ議論を誘導していきます。抽象的な議論からは具体的な解決策が出てきませんし、具体的過ぎる議論は全体を見失いがちになります。
階層構造で状況を整理する手法は、ピラッミッド型思考やツリー構造思考などと呼ばれます。
階層構造は目的を上位において手段へ展開していく構造や問題から問題点へ展開していく構造になります。目的の階層と問題の階層が整理できれば、コンサルタントの仕事は終わったようなものです。
■ コンテンツ/ノウハウを蓄積する
整理/分析のスキルを身につければ、コンサルタントとしての基本的な素養はほとんど身につけたことになります。次に目指すのは、専門知識の習得です。もちろん、事務作業や議事録録取り、整理/分析作業を通じても知識は集積されてきています。それらをふまえて、さらに、専門性を高めていくことで、コンサルタントとしての価値が上昇するわけです。
実際にコンサルタントを育成していきますと以下のようなタイプの方にも出くわします。彼らは、周りへの気遣いにとてもいいセンスをしていて、議事録取りの訓練を丹念に行い、ある程度の整理/分析スキルも身につけた、しかし、本を読んで勉強しないのです。
私は、コンサルタントになりたいなら、毎週10冊本を買いなさいといっています。毎週10冊読めばコンサルタントになれて、読まなかったらコンサルタントになれないわけではありません。しかし、専門的な知識こそが、コンサルタントの価値の源泉ですので、勉強を怠るタイプの方は、コンサルタントにはなれません。
■ リーダーシップを身につける
次の関門は、さらに難しくなります。基本的なスキルを身につけて、専門知識が蓄積されてくれば、コンサルタントとして自立してやっていけます。さらに上を目指すには、リーダーシップを身につける必要があります。リーダーシップは、コンサルタントだけでなく、どんな職業ででも、専門性による付加価値を超えて、さらに付加価値を高める際に必要になってくる素養です。
コンサルタントは、あくまでお客様にとってはアドバイザーであるのでリーダーではないと考えられる方もいらっしゃいます。しかし、実際に、お客様に、問題解決を提供するためには、コンサルタントの側にもリーダーシップが必要です。リーダーシップの弱いコンサルタントは、単に専門知識を提供する辞書のような役割にしか過ぎません。お客様が問題解決できるように、リーダーシップの発揮の仕方を身をもって示せなくては、問題を解決できるコンサルタントとは言えません。
2022年1月13日木曜日
▶問題解決手法
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